ブックタイトルちびっこぷれす Chibikko press 2017年3月号 NO.214
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ちびっこぷれす Chibikko press 2017年3月号 NO.214
5神奈川県生まれ。幼稚園・保育園での勤務を経た後、2007年に北杜市で「森のようちえんピッコロ」をスタート。以来、森のようちえんの活動を実践し続けている幼児教育の専門家。自然の中で〝子どもたちが自分で考え、自分で決める?保育スタイルが注目を集める。現在、園児募集中!ロープを下に通して固結び。ロープを3本使用する班もあれば、1本でがんばりたい班もあり、低 学 年ばかりの 班もあった。ロープ巻きに苦戦している様子もなく、それぞれが工夫して作業をし、大人に聞く子もいない。 すると一番上の方にいた女子ばかりの班が最初に動き始めた。地面には枝も落ちているし、熊笹も一面に生えている。その引きづらさをよそに 4 人がグイグイ引っ張る。そして下方にいる準備中の男子の班を追い越していくのだ。石があると「ここ少し上げるよ」と声をかけながら乗り越える。転がりそうになると木の方向を直す。自ら考え仲間を信じて引っ張っている彼女たちを見ていたら、何だか涙が出そうになった。頼もしいだけではない。黙々と働く動作にしなやかさがあり、そこに生きる力の強さを感じたからかもしれない。他の班もそれぞれの巻き方で引っ張り続け、時間はかかったが全員雪の舞う中、森から木を出してしまった。低学年ばかり4人の班は重い木を選び、最後尾になった。大人が手伝おうかと言っても断られる。「やろうと思えばやれるぞーー!」と大声を出しながら運ぶ彼らに、手伝いに戻った高学年も無言で手を出さない。ついに大勢に見守られながら彼らは運び切った。「がんばったね!」という私の言葉も彼らにはあまり関係ない。自分の意思でやりきったという自己との対話の中だけに、彼らの喜びがあるように私には見えた。 以前の私だったら、まず伐倒のときは安全な場所を指示し、祈りのときにも内容を指示、そして各学年混ぜた班のリストを作り、ロープは大人が巻く、下方の班から順番に出発すると、すべて指示したと思う。終わってから思うのは、今日そのどれもがなかったことが彼らを生き生きさせ、充実感が満ちたのではないかということだ。とにかく彼らは一人残らずいい顔をしていた。大人が子どもに任せられないのは、大人自身が自分を信じる力が足りなかったり、失敗から学ぶという信念や場に対する覚悟が弱くなったときではないかと最近思う。子どもと接するとき、私の自分を信じる力や森の神様と共に生きる力が瞬間瞬間に試される。だからしんどいがいい仕事なのだと思う。何かを信じることができないと、森での保育は私には怖くてできないのだ。