ブックタイトルちびっこぷれす Chibikko press 2016年11月号 NO.210

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概要

ちびっこぷれす Chibikko press 2016年11月号 NO.210

5神奈川県生まれ。幼稚園・保育園での勤務を経た後、2007年に北杜市で「森のようちえんピッコロ」をスタート。以来、森のようちえんの活動を実践し続けている幼児教育の専門家。自然の中で〝子どもたちが自分で考え、自分で決める?保育スタイルが注目を集める。現在、園児募集中!端(ロッカー側)で絵を描いていた。するとロッカーと机の間の狭い通路を年長男児いしん君が割と急いで歩いたので、洋服に触れてみれいちゃんの画用紙が動いてしまった。しかも9 0 度回ってしまったのだ。画用紙を横向きにしていたのに縦になってしまったということだ。その瞬間、みれいちゃんはいしん君をじっと見た。楽しく描いていたので「あ、いしん君に怒るな」と思ったが、彼女は怒らなかった。自分で静かに画用紙を直して再び描き始めたのだ。表情も怒っていなかった。このことは私にとってはどうしても腑に落ちない。「そうか、みれいちゃんにとっては嫌なことではなかったのだな」と推測してみたが、一応確認した。中島「さっきさ、画用紙が動いちゃった時どう思ってたの」。みれいちゃんはこう言った。「嫌だなと思った」。ゲ、嫌だったのか! 嫌ではなかったという中島の予想はやはりはずれた。「じゃどうして怒らなかったの」。みれいちゃんはこう言った。「(いしん君は)歩いてただけだから」。ひぇ~、そこですか。彼女は動いた画用紙の件を不快に感じた。しかし同時にいしん君の立場にもなったということだ。確かにいしん君はただ歩いていただけだった。たまたま通路が狭くて画用紙を動かしてしまった。みれいちゃんはそこを理解した。だから怒りは来なかった。そして平常心で絵に戻れたのだ。私は本当にびっくりした。相手の立場を理解すれば自分の感情を調整できるのか(しかも幼児が)。ということは、怒りの源は想像力不足ということになる。だからピッコロっ子はあまり怒らないのか。確かに彼らには想像力があるし… 。と、端的な結論を出してみたが実はよくわからない。ただこの仮説が正しければ、私がすぐムカッとするのは想像力不足ということになる。がーん。そして次の瞬間にこうも思った。もしもすべての大人が彼女のように相手の立場を想像することができれば、戦争は起こらないのかもしれないと。平和とは世界のことを知り想うことなのか。戦いは一人ひとりの心の中にあると思う。そして答えはいつも子どもたちの中にある。だから私はここで保育をしているのだと思った。