ブックタイトルちびっこぷれす Chibikko press 2016年7月号 NO.206

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概要

ちびっこぷれす Chibikko press 2016年7月号 NO.206

5神奈川県生まれ。幼稚園・保育園での勤務を経た後、2007年に北杜市で「森のようちえんピッコロ」をスタート。以来、森のようちえんの活動を実践し続けている幼児教育の専門家。自然の中で〝子どもたちが自分で考え、自分で決める?保育スタイルが注目を集める。現在は約30名の子どもたちとともに、驚きと笑いに満ちた日々を送る。ながら私に近づいてきた。周りには誰もいなかったが、小さい子が近づいてきたら危ないなと思った。指示せず自分で気づく保育をしているので、やめなさいと言う代わりに「よし、私は普通にすれ違い、わざと水筒に当たろう。で、イタタタと彼に言おう」と思った。それから先は彼が考えることだ。人に痛い思いをさせたから次回から水筒を回さないように歩くとか、水筒を回す時には人がいないところでやるとかいろいろあると思う。危険を回避できれば、あとはなんでもいい。私はスネに当たったら痛いだろうなぁ、と思いながら歩き続けた。彼も近づいてきた。覚悟を決めてすれ違う。すると寸前で当たらない。えっ、どうして。彼は私をよけたのだ。よけながら引き続き同じスピードで水筒を回しすれ違って行った。当たらないわけないのに! スネの痛さを覚悟した私はキツネにつままれたようだった。ゲ、なんだこれ。そして力が抜けた。後から聞いたら、やはりまさかだった。「なんで私をよけたの」。「当たると思ったから」。彼はフツウに言った。彼には中島が見えていたのだ。「わざと当たってイタタタ」という保育計画は崩れたし、何より彼が中島の存在が見えているということを信じていなかった。またまたこれも申し訳ない。 で、彼もすごいけれど、何が言いたいのかというと、子どもたちは常にこんなことを友だちから受けているということだ。特に上級生からはびっくりすることを日々されている。子どもは中島のように「なんでよけたの」とは聞き返さない。けれど体で学んでいる。当たる寸前でよけてくれたという事実から彼らが学ぶことは計り知れない。そしてこれこそが大人が教えられないことなのではないかと思う。例えばこれを大人が言葉で教えるとすると、「水筒を回して歩く時、対向者が来たら少しよけること」。何それ。だったら最初から「水筒を回して歩かないこと」と決まりを作った方がまだいいか(笑)。群れでの育ちを家庭でやるのは難しいと私は思う。 私の仕事は健全な群れを保つこと。弱肉強食にならず平和で平等な群れ、そこで主役の彼らが育ち合う。その姿がやはり毎日美しいのだ。