ブックタイトルちびっこぷれす Chibikko press 2016年4月号 NO.203

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概要

ちびっこぷれす Chibikko press 2016年4月号 NO.203

5神奈川県生まれ。幼稚園・保育園での勤務を経た後、2007年に北杜市で「森のようちえんピッコロ」をスタート。以来、森のようちえんの活動を実践し続けている幼児教育の専門家。自然の中で〝子どもたちが自分で考え、自分で決める?保育スタイルが注目を集める。現在は約30名の子どもたちとともに、驚きと笑いに満ちた日々を送る。した。年中3人の班は誰かが1人抜けなくてはということがわかるようだ。しばらくシーンとしたが、突然みらいちゃんが泣きながら言った。「みらいが抜ける」。誰も抜けないから自分が 抜けるしかないと思ったらしい。だから悲しくて涙が出た。私はすごいなと思った。 するとひろのちゃんが言った。「あ~、だめだめ。無理に抜けるのは。抜ける時は普通の顔じゃないと」。泣きながら譲る行為はダメだということだ。人に譲るのと自己犠牲は違う。中島「どうして泣きながら抜けるとだめなの」。ひろの「心が逃げちゃうの」(え!)。中島「心が逃げちゃうってどういうこと?」。ひろの「心が“もうこの体はわかってくれないな~”と言って体から出て行っちゃうの」(そうなの!)。中島「でも逃げちゃってもいいよね」。ひろの「だめだめ、そしたら考えられなくなっちゃうよ」。ピッコロっ子は頭で考えると心で考えるの違いがわかっているので、心で考えられなくなるということか( ふ~)。ひろのちゃんがそう言った途 端にみらいちゃんの涙が止まり、顔がすっきりしたように見えた。その時みらいちゃんは「みんなよく知っているな」と思ったらしい。泣きながら譲るのは違うということをみらいちゃんは知らなかったということだ。そして「わかったから今度からそうする」とも言った。だめなことを教えてもらったら直せばいい。ただそれだけのことだ。でも私にはそんなに簡単にはできないが…。もちろんみらいちゃんが譲ったことは悪いことではない。むしろ素晴らしいことだ。その気持ちはなくなってほしくなかったので、私は彼女に確 認した。「自分が抜けてあげようと思ったことはとてもいいことよ。だけどひろのちゃんは泣きながら譲ったということだけが違うと言ったのよ」。彼女はしっかりわかっていた。  3月。全園児がその子なりの速度で、でも確 実に心が 育っている。年 長 児は身震いする程 育っている。さぁ、巣 立ちだ。疲れたら羽ばたきを休んでもいいことを知った。応援はしてくれても羽ばたくのは自分しかできないことも、自分は絶対に羽ばたけるということも知った。大丈 夫 、もう巣 立っていける。大 丈 夫 、大丈夫(泣)。