ブックタイトルちびっこぷれす Chibikko press 2016年3月号 NO.202
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ちびっこぷれす Chibikko press 2016年3月号 NO.202
5神奈川県生まれ。幼稚園・保育園での勤務を経た後、2007年に北杜市で「森のようちえんピッコロ」をスタート。以来、森のようちえんの活動を実践し続けている幼児教育の専門家。自然の中で〝子どもたちが自分で考え、自分で決める?保育スタイルが注目を集める。現在は約30名の子どもたちとともに、驚きと笑いに満ちた日々を送る。私はジャンケンにも参 加していない。無条 件で1つを頂いたという立場だ。ただひろと君の「いつも子どもたちを見てくれている」という感 謝の気持ちを無にしてはいけないとも思った。負けた子にわけてあげたかったけれど、わけることは彼らに失 礼にあたらないかと思った。6 歳にもなればプライドもある。自分で決めたジャンケンという方 法で決めた結果に、大人がかわいそうという理由だけでわけてあげる行為に傷つきはしないのか。以前 同じようなことがあった。その時は食べないと辞退した子に、私は自分の分をあげられなかった。彼女に失礼だと思ったからだ。彼女も受け取らなかっただろう。そんな男気のある女の子だったのだ。しかし今回の方法はジャンケンだ。辞退した時となんとなく違う感じがした。頭の中でグルグルとものすごく迷った挙 句 、私は半 分を2つにわけて彼らにあげた。中島が 1 / 2 、ジャンケンに負けた彼らが1 / 4ずつということだ。傷つけたらごめん!と思いながら心は恐る恐る、しかし顔は明るく「はいっ!」と差し出した。内心ドキドキしたが 、なんと彼らは 嬉しそうに1/4をパクッと食べたのだ。ホッとして力が抜けた。 するとひろと君が言った。「ごめんな、太郎、あまね」。え、そこ? 「ジャンケンで決めたのに食べるのはずるいよ!」。そう言ってもいい場面だが、そんな言葉は全くなかった。そしてその言葉に、自分は譲らなかったという負い目もない。ジャンケンは正当な方法だ。もちろん彼らは思いやりの心がなくて譲らなかったのではなかった。後から聞いたら、2人とも心の中では“2つ食べて悪いな”と思っていたらしい。ちさと君に「(悪いなと思うのは)当たり前だよ」と言われてしまった。悪いと思いながら自分たちで決めたルールを尊重した。ジャンケンで負けた2人にも恨みがましい気配がなかった。そこにいた子どもたち全員がとても清々しい雰囲気だったのだ。私の行為は正しかったのかどうかはわからない。だが彼らには、もう私が何をしてもあまり影響がないような気もした。私の管理下にいなくなったのだ。嘘のようだが彼らに接すればよくわかる。自分で考え判断できてしまう。毎年ここまで育つと涙の卒園式の季節なのだ。今年もあと26日になってしまった(泣)。