ブックタイトルちびっこぷれす Chibikko press 2015年9月号 NO.196

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概要

ちびっこぷれす Chibikko press 2015年9月号 NO.196

5神奈川県生まれ。幼稚園・保育園での勤務を経た後、2007年に北杜市で「森のようちえんピッコロ」をスタート。以来、森のようちえんの活動を実践し続けている幼児教育の専門家。自然の中で〝子どもたちが自分で考え、自分で決める?保育スタイルが注目を集める。現在は約30名の子どもたちとともに、驚きと笑いに満ちた日々を送る。した。なにこれ。再び彼 女は前を向いて歩き出す。私も引き寄せられるように歩き出す。そしてその勢いで私は、3頭 の牛の間を通り抜けることができたのだ。キツネにつままれたような、嘘のようなホントの話 。しかしこんなとてつもなく大したことない出来事に、なぜだか私は泣けてきてしまった。一人という怖さに牛が寄り添ってくれたのでホッとしたのだろうか。昨 年 、 最 初 に 泊まったア ル ベ ル ゲ(宿)で、「カミーノにはその人に必 要なものが落ちています。それを一つひとつ拾って行くことにカミーノ巡礼の意味があります」と神 父さんが教えてくれた。そんなことしてもしなくてもいいと思うが 、私はそうしたかった。だがこの3日間してこなかった。意味を考えながら歩くというのは少し面倒なのだ、自由気ままに歩きたくなる。そしてそれを日本においてきた少し気がかりなことのせいにしていた。このことがなかったら、神父さんの言うように歩けるのに。私は面 倒 臭いという本当の理由を誰かのせいにしてきたということだ。大 人はいつも、できない理 由を正当なことにすり替えられる生き物だと私は思っている。そしてそれを平 気で見ないようにできるし、見ようとしないこともある。カミーノ巡 礼に来ているにも関わらず、私は自分のそのずるさをわざと見ないようにしていた。巡 礼 中 少し心 地 悪かった自分に、その時向き合えたのかもしれない。だから涙が出たのだろう。やはりカミーノには自分にとって大 事なものが落ちていた。しかしながらやはり母の力はすごいと思った。牛だけど異国の地で“お母さん”というだけでこんなにも安心感が得られるのだ。スペインで言葉を交わした子連れのお母さんは皆同じ匂いがした。私はずっと前から思っていた。世 界 中のトップが 産む性である女 性だったら戦 争は起こらないような気がする。男性の皆様にはごめんなさいだけど。