ブックタイトルちびっこぷれす Chibikko press 2015年1月号 NO.188

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概要

ちびっこぷれす Chibikko press 2015年1月号 NO.188

12編集部 「ねこのピート」を翻訳することになったきっかけは? 大友 「ねこのピート」は音楽とコラボした特殊な絵本。出版元のアメリカでは、少女のよみきかせの動画がYouTube にアップされたのをきっかけに爆発的に広まったそうです。日本の出版社の方は、プロの翻訳家ではなく、普段子どもたちと音楽を通してふれ合っている人に翻訳を依頼したいと思ったそうです。編 翻訳するにあたって、調査など何か特別なことをしましたか?大友 出てくる単語は本当にシンプルです。だけどそれを翻訳して、元の生き生きとした雰囲気を作るのが難しい。そこで色々な翻訳をして、それを月に20 回くらいやっている私の公演で試してみました。子どもたちのリアクションからヒントをもらってできた翻訳なんです。編 「ねこのピート」の魅力は?大友 何があっても自分らしく生きるピートが持っている独特の魅力。子どもたちとのかけ合いと歌で盛り上がれること。そしてピートの思想が絵や物語と絶妙に調和して、全く押しつけがましくなく表現されているところ。世界各国で翻訳されていて、中にはエリック・カールの「はらぺこあおむし」に並ぶくらいの作品だと言う人もいるそうです。普遍的な魅力を持った特別な絵本だと思います。編 日本での受け入れられ方は?大友 幼稚園や保育園に行ってピートの絵本ライブをやるのですが、ものすごい反響です。公演後には、子どもがずっとピートの歌を歌ってます、ピートの劇をやりました、工作をしました、オリジナルのストーリーを作りました…と、ほぼ毎日メッセージが届きます。編 子どもたちに愛されてますね。大友 20 年もよみきかせをしている図書館関係者から「こんなに子どもと一体になれる絵本は今までない」と言われたこともあります。また闘病中の方で「私もピートのように生きたい」とお手紙を書いてくれた方もいました。ピートは大人も元気にしているんだと思います。編 大友さんのお子さんの反応は?大友 最初に翻訳の話をいただいた時、息子は3歳。その頃に英語で覚えているので、もしかしたら日本でのピートの一番の理解者は彼かも(笑)。実は日本語版のデザインは妻が担当しています。私も翻訳に悩みながらも、常に家族と楽しみながらこの絵本を作っていました。ピートのおかげで、家族にとって幸せな時間をすごすことができました。「かなりさいこう!」は間違い?編 絵本の中に出てくる「かなりさいこう!」って、すごい名訳ですね!大友 そう言われるとほっとします。原文は「I love my white shoes」という歌の部分。直訳だとサブタイトルにした「大好きな白い靴」なんだけど、これだと子どもたちが盛り上がらない。「いいね!」とか色々やったんですけど、「かなりさいこう!」が抜群に盛り上がるんです。編 言葉としては間違ってますよね。大友 そうなんです。出版社の内部でも、最上級の「さいこう」の上に「かなり」を重ねるのは間違っているという指摘があって、会議にかけられたようです。でも子どもたちに一番響くからと、私も編集者も覚悟を決めて出しました。編 このフレーズのおかげで、原書とはまた違った命が吹き込まれたような気がします。大友 幸い心配していたクレームは来ず、「ねこのピート」の訳者・大友剛さんに聞く絵本と音楽とマジックの不思議な力通称“ピアニカ王子”。音楽とマジックと絵本のライブで、全国の子どもたちに笑いとパワーを届けている大友剛さんですが、2013年に絵本「ねこのピートだいすきなしろいくつ」の翻訳を担当することに…。名訳との評判も高い日本語版「ねこのピート」の誕生エピソードや今も東北の被災地に通い続けるその思い、そして最近山梨に越してきた理由についてもうかがいました。大友剛(おおとも たけし)音楽・マジック・絵本を組み合わせたパフォーマンスで、全国の子どもたちを魅了するミュージシャン&マジシャン。絵本「ねこのピート」シリーズの翻訳も手がけ、絵本の世界でもその才能を発揮する。南アルプス市在住。5歳の男の子のパパ。