ブックタイトルちびっこぷれす Chibikko press 2014年9月号 NO.184

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ちびっこぷれす Chibikko press 2014年9月号 NO.184

5戻った。そしておじさんのすごさを思った。彼はカミーノ上の一つひとつを丁 寧に見る人だったのだ。同時に灰谷健次郎さんの本も思い出した。小 児 麻 痺の女の子が2 0 0 mの道をお花や虫と友だちになりながら、40分かけて歩くという話。現代社会の価値観からは速い方がよい。しかし本当の豊かさとはなんなのだろう。私は現代社会にドップリ浸かりながら大人になってしまったのだ。祈 念 樹さえにも手を合わせられないのだから。  またしばらく行くと、おじさんがキョロキョロし始めた。道がわからないのかと思ったら、どうやら通りがかった教 会の入 口を探していたようだ。「へぇ!おじさんって教 会にも寄っちゃうんだ。私は苦手 … 」と、おじさんを通り越した。越した道沿いにおじいちゃまが立っていた。「カミーノの道はこっちですよね」と私は言った。するとおじいちゃまが私に何か言う。わからなかったが 雰 囲 気で後ろについて行くと、おじさんが入った教 会に入っていった。その教会を管理する人だったのだ。私は帽 子を取り、祭 壇に歩いた。私しかいない静かな教 会で手を合わせキリスト像や十字架を見ていると、自然と涙が出てきた。だからだったのだ…。祈念樹で現代社会に浸った自分が嫌だと思ったにも関わらず、まだわからないので、更におじいちゃまが教えてくれた。大事なものをスルーする人生はもうやめなさいということだ。 以前私は「暗記重視の学校教育は、例えば橋を渡る時 、“怖いな”“渡りたくないな”と思うその気 持ちをいったん橋のたもとに置いて渡るということだ」ということを聞いたことがある。それを聞いた時、人生にはそんなことはいくらでもあると思った。ただそれが 6 年+3 年+3年、もしくはそれ以 上ずっと置き去りにされ続けるとしたら、これはどうなるのだろう。分 数の割り算は分 母と分 子をひっくり返して掛ければいいと教わった。どうして3分の1のケーキを3分の1で割るとケーキが一つになってしまうのか、そこでひっかかると遅れてしまう。橋のたもとに置き去りにするということはそういうことだと理解した。 それは大 事な何かをスルーし続けて生きてきた私へのサインだった。急ぐ旅でないのに祈 念 樹は見ない。教 会にも立ち寄らない。サインは出し続けられていた。 そしてこれは、私の仕事にとっても大変必要なことだった。子どもたちには、橋のたもとに大事なものを置き続けさせてはいけない。分数の割り算でひっかかった子に、自分の頭で考えたことを認めながらとことんつき合う覚悟が必要なのだ。カミーノはやはりすごいと思った。大事なことが私に入ってきたのだから。ヒガンバナ秋のお彼岸の頃に、真っ赤に燃え上がるように咲く姿は実に印 象 的 。ヒガンバナには毒があるため、ネズミやモグラが近づかないことから、田んぼや 畑 、お墓の周りに植えられるようになりました。お花 と 葉っぱが一緒に顔 を出すことはありません。お花が枯れると、葉っぱが顔を出します。冬の間 、青々と葉っぱで光 合 成をして、春になると葉を枯らせます 。とても珍しい植物です。