ブックタイトルちびっこぷれす Chibikko press 2014年9月号 NO.184

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概要

ちびっこぷれす Chibikko press 2014年9月号 NO.184

15てくれて、初めて川遊びをするという体験をしたんです。川に足をつける。それだけですごく感動してずっとニコニコしていました。「ウチの子は外に行けない」と思っていたお母さんもビックリ。自然の中に身を置いて、そこで育つものって確かにある。お日様の光なのか、川の水なのか、風のそよぎなのかわからないけど、目に見えない何かで人は育てられていると思うんです。岩崎 もうすぐ3歳になる息子は、自然の中にいっぱい友だちがいる感じで、今はひたすらアリと遊んでいる。羽中田 ウチの子は昔、ミミズでした!岩崎 本当にこれでもかってくらいアリなんです。でもすごく楽しそうで、幸せそう。自分が自然の中に受け入れられていることを感じているような気がする。彼は月が出たら「月が出た」と言うし、朝目覚めて空に月がないとさめざめと泣くんです(笑)。この間なんかは牛乳をこぼしてテーブルの上にできた三日月のような跡を見て、「おつきさまみたい!」って喜んでましたけど、これって誰かから教え込まれてできることじゃなくて、自分で何かを感じないと出ない言葉ですよね。羽中田 絵も言葉も感じたことを表現するものだから、まず感じないと始まらない。自然の中には、街や家の中にはないものがいっぱい転がっているから、そういう感動を得る機会が多いんでしょうね。岩崎 絵を描いたり文章を書いたりすることと、自然とはとても相性がいいと思います。これでいいんだ!羽中田 自然には同じものは一つもない。そして全部に命がある。だから子どもたちにも、命あるものはみんな違うということがわかるんだと思います。そこがわかると、自分も他人と同じじゃなくていいし、ちょっと変わっている他人のことも大らかに認められる。やっぱり自然ってすごい!岩崎 「これでいいんだ!」って思った瞬間に、子どもはすごく変わります。「雨の音を書いてみよう」って言っても、最初はなかなか自分の表現ができません。羽中田 「ザーザー」とか「ポツポツ」とか、決まりきったところから抜け出せませんよね。素直に表現できればいいんだけど、「それちょっと変」とか「違うよ」とか言われるのを恐れて萎縮しちゃう。岩崎 そうなんです。でも一度そこで自分が作った言葉が受け入れられると「これでいいのか!」ってなって、次々と出てくる。その“変な音”をみんなで読んでみると面白いし、楽しいし、感動する。少しも変じゃないってことを子どもにも、そして大人にも知ってほしいです。羽中田 「変だよ」「違うよ」って、親や先生が言いがちですよね。岩崎 そこって今の学校教育の中では、もしかしたら邪魔な部分なのかもしれないけど、カットしちゃうともったいない。羽中田 私が子どもの頃、ウケ狙いでふざけて作文を書いたことがあったんです。でもその文を読んでほめてくれた先生がいました。そういうことって子どもはずっと覚えているんです。だから私も教室ではなるべく子どもをほめたいと思ってるんですが、教室にいるよりも外に出て色々やった方が、子どもをほめる機会も増えますね。子どもの様々ないい面を見ることができる。一つのモノサシだけで子どもを評価したくないし。岩崎 今は学校でのお勉強が最大の評価で、場合によっては唯一の評価になっちゃってるかもしれない。だからこそ私はなるべく外に出て、子どもたちを学校の先生や親以外の普段は出会わないような大人、様々な仕事をしている大人に出会わせてあげたいって思っています。羽中田 子どもたちは本来、自分で発想して何かを生み出す力を持っているけど、それを受け入れる環境が今の世の中には少ない。でもどこかでそれを認めてくれる大人に出会えれば、子どもたちはその力をどんどん伸ばしていけるはずです。自分だけの絵や言葉を…岩崎 自然には子どもたちの心を解放する力があるのかな。外で活動すると子どもたちがすぐ仲よくなるし、一人ひとりが優しくなって、みんなのことを大事に思うようになる気がします。羽中田 たぶんフラットになるんでしょうね。誰のものでもない空間で、一人の人間対人間として振る舞えるのかな? 私自身も子どもたちのと関係では、目上とか目下とか先生とか生徒とかじゃなく、人と人で接したいと思うんです。自然の中ではそれがやりやすい。一人の絵描きとして、子どもから学ぶことも多いです。岩崎 5歳なら5歳、3年生なら3年生のその時にしか出てこない言葉があるのを私も感じます。それはたとえ整ってなくてゴツゴツしたものだったとしても、誰にも真似できない本当の言葉だと思うので、尊重しなくちゃいけませんね。そして私は自然と子どもたち、社会と子どもたちをつなぎながら、彼らの心の内から本当の言葉が出てくるのを、ちょっとお手伝いしてあげられたらいいかな。羽中田 私が子どもの頃は、川で泳いだり、柿を盗んで大人に怒られたり、近所のおばあちゃんから草笛の作り方を教わったりして、自然の中で五感を働かせて、そして人との接し方も学んでいたように思います。だけど今はそういう環境にない。それはとても残念なことだけど、でも街の中にいたって、目をつぶって耳をすませば、普段聞こえない様々な音を聞くことができると思うんです。子どもはきっと、環境に応じてたくましく生きる力を持っているから。岩崎 そうやって成長する中で、自分にしか書けない文章を自分で見つけるように、自分だけの絵や、自分ならではの楽しいことや、自分にしかできない仕事を見つけるようになってもらいたい。それが子どもたちの幸せにつながっていくんじゃないかと思っています。私はそこに、少しでも携わることができたら嬉しいな。