ブックタイトルちびっこぷれす Chibikko press 2014年8月号 NO.183

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ちびっこぷれす Chibikko press 2014年8月号 NO.183

43真ん中にあるのは子ども宮沢 新制度によって認定こども園や少人数の保育施設などが増え、保育のシステムが整うのは悪いことではないと思うのですが、私は子どもの長時間保育が当たり前のように広がるのは心配です。 鈴木 本当にそうですね。待機児童の解消や働く女性の支援ばかりを進めて、子どもの利益が後回しでは本末転倒です。宮沢 以前、企業内保育の事業をしていた時に出会った5歳の女の子がいたんですが、すごく荒れていたんです。よくよく話を聞いてみたら、土日は私たちの企業内保育所に、平日は別の保育所に預けられていたんですね。ママは平日休みの方だったんですが、子どもがいるとゆっくり休めないから、彼女はずっと預けられっぱなし。「私も休みたい」って5歳の子が言うんです。お母さんも悪気があったわけではないので、事情を話して親子の時間を作るように勧めました。鈴木 量が増えるだけじゃなく、質が伴わないとね。かつて流行った早期教育みたいなことをやり始めている園が増えているのも気になります。それにはあまりメリットがなかったって、一度多くの幼稚園が通ってきた道なのに…。宮沢 真ん中にあるのは子ども。それだけは間違わずにいてほしいですね。それから私は、いくら認定こども園が増えたとしても、やはり幼稚園には幼稚園らしさを失ってほしくないな。早期教育でも大人の価値観の押しつけでもなく、一人ひとりの育ちを真剣に見つめながら、そして各園で個性豊かな教育を行っている。そういう幼稚園の伝統は、ぜひ新制度の中でも生かしてほしいです。幼児教育を投資と考えると…宮沢 新制度をトータルで見てどう評価していますか?鈴木 新制度の中には、日本のすべての子どもに質のいい幼児教育・保育を、という理想的精神が流れていると感じています。これまで少子化対策という視点が大きすぎて、世界の保育制度改革の流れからとり残されていた日本が、遅ればせながらその流れに乗ったということでしょう。そこに一筋の希望がある。宮沢 私はフィンランドに行って、その改革の優れたところを目の当たりにしてきましたが、日本にもそのことが伝わってきてるんですか?鈴木 文科省の役人はとっくにわかっていたはずです。OECD(経済協力開発機構)は本来、経済政策を各国に提案する機関なのですが、教育局部門を持ち、教育政策の提言も行っています。そこでは教育を投資と考えた場合、一番リターンが大きいのは幼児教育だという提言があるんです。小さい頃から優れた教育を受けて生産性の高い仕事に就き、また税金も支払って社会に貢献する。片や教育機会に恵まれず、犯罪者となって社会に損害を与え、刑務所に収監されて税金を食いつぶす。…これは両極端な例えですが、国家にとって得か損かというプラグマティックな考えからも、幼児教育を重視すべきというのが国際的な流れなんです。宮沢 それは嬉しいですね。新制度の優れた精神をどう生かすかの多くは、各地方に委ねられている部分がかなり大きいですよね。山梨型と呼ばれるような、独自のものができるといいですね。山梨型の子育て支援モデルを鈴木 今、山梨県内の私立幼稚園の定員充足率はわずか55%です。その一方で、地域の子育て力が低下している中、幼稚園が地域の親子のためにできることって、たくさんあると思うんです。新制度は、それができる好機じゃないかな。宮沢 今の子育て支援の多くは、施設という箱と、子どもや家族の置かれている個別の事情の間を埋めるものが少ない。そこを臨機応変に埋め、一人ひとりの子どもや親の気持ちに寄り添うような支援が大切だと思います。能力も経験もある支援者が、介護におけるケアマネージャーのように個々に応じた子育て支援プランを提案する。そんな形も望まれているのでは。私たちNPOだけじゃなく、幼稚園にもその担い手になってほしいです。鈴木 園の空き教室を活用して、来年度から6年生までを対象に広げる放課後児童クラブの受け皿になったり、一時預かりをやったり。あるいは居宅訪問型の保育にスタッフを派遣するなど、新制度の子育て支援事業の中で幼稚園ができることはまだまだある。そこで質の高い仕事をすれば、それが地域の少子化を止めることにもつながるのではと思っています。幼稚園も保育園もNPOも垣根を越え、一緒に宮沢さんの言うような山梨型の新しい子育て支援モデルを作りたいですね。幼稚園あるいは教育を目的に認定こども園の利用を希望1幼稚園・認定こども園に直接利用を申し込む2園から入園の内定を受ける3園を通じて利用のための認定(1号認定)を市町村に申請4市町村から園を通じて認定証を交付幼稚園あるいは認定こども園と契約保育所あるいは保育の必要性があって認定こども園の利用を希望1市町村に「保育の必要性」の認定を申請2市町村から認定証(2号or3号認定)を交付3保育所・認定こども園の利用を申し込む4申請者の希望保育所等の状況をふまえ、市町村が利用調整利用先の決定後契約図2 3つの認定の申請と施設利用までの流れ子ども・子育て支援新制度のポイント①認定こども園・幼稚園・保育所による 幼児教育・保育の充実と共通の給付 (施設型給付)②認定こども園の促進③地域の実情に応じた子育て支援の充実…地域子育て支援拠点事業(子育て支援センターなど)・利用者支援事業(教育・保育施設や子育て支援事業の情報提供、利用アドバイスなど)・妊婦健診・乳児家庭全戸訪問・子育て短期支援(ショートステイ)・一時預かり・延長保育・病児保育・ファミリーサポートセンター・放課後児童クラブなど