ブックタイトルちびっこぷれす Chibikko press 2014年7月号 NO.182

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ちびっこぷれす Chibikko press 2014年7月号 NO.182

34小児科Dr.宮本の連載コラム午後10時、クリニックにて…    ?おほしさまの先生からの子育て応援“談”!?宮本直彦(みやもと・なおひこ)小児科医。山梨市加納岩総合病院勤務などを経て2004年、昭和町で夜間や休日の小児救急にも対応する医院・げんきキッズクリニックを開業。2009年春、移転してリニューアル。クリニックと同じ敷地内に「げんき夢保育園」を開園。Vol.111 変わりつつある食物アレルギーの対応法 まもなく梅雨が明け夏本番になります。7月7日は七夕。毎年うちの保育園から七夕の短冊が配られますが、今年は短冊に「長生きできますように!」と書きました。30代の頃は人生まだまだ先は長いという思いでしたが、40代に入り折り返し地点をすぎた頃から健康を意識するようになりました。通勤は自転車です。 さて、2年前に東京都調布市の小学校で、チーズなどにアレルギーがある5年生の女子児童が給食を食べた後に亡くなるという事故がありました。これをきっかけに園や学校で食物アレルギーの対応が厳格化し、アナフィラキシー時に医療機関外で使用できる「エピペン」の登場も加わりました。医療の進歩と保育・教育現場の体制の変化により、5~10年前の知識では対応ができない状況にあります。昨年7月の「エピペンの対応について」に引き続き、今月は食物アレルギーについてお話します。食物アレルギーとは 食物アレルギーは乳児で5~10%、幼児で約5%、学童期以降では1.5~3%の発症頻度があり、決して珍しい病気ではありません。原因食物は卵・牛乳・小麦の順で多いです。症状はじんましんなどの皮膚症状が最も多く、咳や下痢などの症状もあります。10%でショック症状と言われるアナフィラキシーがあり、生命を脅かすほどの重いアレルギー症状が出ることがあります。 「食物アレルギー診療ガイドライン2012」によると、食物アレルギーとは「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」を言います。難しく書いてありますが、要するに食物を食べじんましんなどの症状が出る病気です。初めて卵を食べたら全身にじんましんが出たり、回転ずしでイクラを食べたら口唇が腫れて目や耳にまで赤みが広がるというのがよくあるケースです。口の周りが赤くなる場合、食物アレルギーかどうかと心配される場合があります。皮膚が荒れていると赤くなりやすく、食物アレルギーと間違いやすいこともありますので、自分勝手に決めつけず、きちんと診断をしてもらうことをお勧めします。特異的IgE抗体検査は万能ではない 食物を食べてではなく、特異的IgE抗体検査が陽性というだけの理由で陽性の食品をすべて除去しているお子さんがいます。問診から原因の明らかな食物がはっきりわかる場合はその食品だけを除去することに問題ありませんが、検査で陽性になっただけで除去する必要はありません。 特異的IgE抗体検査で「陽性=除去」ではありません。この検査は感作されている(感じやすい状態)かどうかを知るものです。陽性は症状が出るかどうかを見ているのではありません。プロバビリティカーブって? 特異的IgE抗体検査で値が高いほどアレルギー症状が出やすい傾向にあります。最近、診断にプロバビリティカーブを利用するようになってきました。プロバビリティカーブでは、食物を食べて症状が出る可能性と特異的IgE抗体価の関係が曲線として示されています。食物・年齢によって曲線が異なり、例えばミルクの特異的IgE抗体価が3.0 UA/mlの場合、症状が出る可能性は1歳未満で約90%、1歳で約50%、2歳以上で約30%と判断できます。このカーブを利用し診断や負荷試験の決定をしています。まだ全食品に対応はできていませんが、現在、卵白・ミルク・小麦では利用できます。食物負荷試験をうまく利用しよう! 食物アレルギーの診断や除去解除にプロバビリティカーブを利用しても確率でしかわかりませんので、最終的には食物負荷試験を行います。検査値が陽性というだけで除去をしている場合は、一度食物負荷試験を試すことをお勧めします。食物除去は日々の生活の質を下げます。ただでさえ忙しい子育てに除去が加わると、負担が増えるばかりです。ガイドラインでは必要最小限の食物除去、つまり食べられる子には食べさせることが大切だと言っています。予防法はありますか? 食物アレルギーにならないように予防ができないかと世界中で多くの研究が行われてきましたが、現段階で食物アレルギーを予防する方法は明らかにされていません。妊娠・授乳中の母親自身の食物制限や子どもの食物摂取を遅らせたりすることは発症予防につながりません。通常通りの離乳食スケジュールで進めてください。参考文献:「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」厚生労働省 2011年「食物アレルギー診療ガイドライン2012」日本小児アレルギー学会「食物アレルギーのすべて」 南山堂 2013年