ブックタイトルちびっこぷれす Chibikko press 2014年2月号 NO.177

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概要

ちびっこぷれす Chibikko press 2014年2月号 NO.177

41視覚障害を持っている息子は「手のかかる子ども」です。でも、だからこそ、濃密で幸せな時間をもらえたんだな、と今では感じます。人が見つからないという方は、見つけようとしていないだけ。だいたい親って子どもの将来を思って、こうしなさい、ああしなさいって言うじゃないですか。でも言っている大人がやっていないという場合は結構あると思います。まずは自分がちょっと動いてみたら、いいんじゃないかな。目の前に持っていったら反応があったので、見えるようになっていたんですね。それまでは寝返りもしなかったんですが、見えるようになってから成長が早くて、2、3ヵ月でハイハイからつかまり立ちまでするようになったんです。宮沢 当時はどこか相談に行ったりする所はありました?野澤 なかったです。市の健診に行くと、明らかに目つきがおかしいので周りのお母さんからの視線と、毎回イチから説明しなければいけなかったのが苦痛でした。その時に「指差しをしますか?『あっち』って言いますか?」って聞かれるんですね。彼にとっての世界はきっと、ぼんやりと見える身の周りだけなので、「あっち」という概念はないんです。でも、この月齢でそれをしないのはおかしい。発達に遅れがあるって言われて、釈然としない思いでした。1歳半から盲学校の教育相談に行くようになりました。その頃心がけたのが、色んな体験を与えようということでした。新聞でイベントをチェックしてはあちこちに出かけたので、完全失明する3歳1ヵ月までの活動量は他の子より多かったと思います。その後の彼を見ていると、あの頃にやったことはよかったのかもしれないなと感じることは多かったですね。世界が広がった宮沢 彼の目が見えなくなって辛かったことはどんなことしたか?野澤 「どうしてボクには友だちがいないの?」って言われるのがすごく苦しかったです。お友だちはみなさん優しくしてくれるんですよ。でも、どうしても一緒になって遊ぶことはできないじゃないですか。それでも小学4年生だったか、その頃には彼はパソコンが好きで、自分で視覚障害者のためのサマーキャンプの情報を拾ってきて参加したんです。そこで初めて、自分の好きなゲームのことを話せる友だちを作ることができました。そして彼はゲームをするために英語を学んでメールをやりとりするようになっていって、高校生になった今、自分でゲームを作るようになっています。宮沢 どんどん世界が広がっていったんですね!野澤 彼はインターネットで知り合った人と実際に会うんですよ。私が人と会う時は彼も連れて行くようにしていたので、ネットの世界だけでなくリアルに交流することのよさを知ってくれているんだと思います。宮沢 それは素晴らしいですね!野澤 でもさすがに、全盲の子を一人で遊びに行かせるのは心配しますよ。それでも私たちは「かわいそう」って思ってほしくないんです。よく視覚障害を体験してみようということで、アイマスクをするじゃないですか。でもあれをすると急に何も見えなくなるので「怖い」という気持ちしか残らない。だから「見えない人はかわいそう」ってなってしまうんです。そうではなくて、何も見えない人の“目線”を知ってほしいですね。例えばバリアフリーって、実は視覚障害者にとっては最悪なんですね。部屋の変わり目もわからないので、自分がどこにいるかわからないんです。幸せな時間をもらえた宮沢 最後に子育て世代にエールをお願いします。野澤 彼は「手のかかる子ども」で、正直大変な思いをしました。でもある程度育ててしまってからは、なおさら濃密で幸せな時間を彼からもらえたんだなと感じるんですね。そういう子だったからこそ出会えた人もいます。あと、きょうだいがいると、そっちにも同じように手をかけてあげることは正直できないけど、その子たちは絶対に他人に対して優しくて気を使える子に育ちます。疲れてしまった時は話ができる人がいればいいですね。そんな※電子書籍版のメイン写真をタップすると、インタビュー時の動画を見ることができます。