ブックタイトルちびっこぷれす Chibikko press 2014年1月号 NO.176

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ちびっこぷれす Chibikko press 2014年1月号 NO.176

30小児科Dr.宮本の連載コラム午後10時、クリニックにて…    ?おほしさまの先生からの子育て応援“談”!?宮本直彦(みやもと・なおひこ)小児科医。山梨市加納岩総合病院勤務などを経て2004年、昭和町で夜間や休日の小児救急にも対応する医院・げんきキッズクリニックを開業。2009年春、移転してリニューアル。クリニックと同じ敷地内に「げんき夢保育園」を開園。Vol.105 多くの薬は授乳を中止する必要はない あけましておめでとうございます。今年も子どもに関する医療情報を読者のみなさんに提供できたらと思っています。これからもよろしくお願いします。私の今年の目標は、仕事においては子どもたちのために最新の医療を提供し、学会・講演会などで勉強に励むこと。プライベートでは、まだ1歳の娘と生涯の伴侶である妻のために、長生きする上で必要な健康づくりを心がけることです。健康づくりとして、すぐにできるランニングをしています。県内のマラソン大会には積極的に出場していきたいと思います。見かけたらぜひ声をかけてください。 今月は診療でよく質問される「授乳中にお薬を飲んでいいの?」についてお話します。「薬を飲んだら授乳できない」はウソ! 薬の説明書である「添付文書」といわれているものがあります。多くの薬の添付文書に「母乳中への移行が報告されており、授乳中の婦人への投与は避けること」とあり、医療関係者でもそのままの記載を信じている人も多いのが現状です。添付文書を作成する上で、臨床治験をしながら薬が安全かを検討するのですが、母乳中の濃度までは調べることはなく、一律に「授乳中は避ける」と書かれてしまいます。 ママが薬を飲むと消化管から吸収され、乳腺まで運ばれ血液を介して母乳中に薬が到達します。さらにお子さんが母乳を飲んで消化管で吸収されます。薬を飲むと母乳に移行することは事実ですが、その量は非常に少ないと推測されます。実際計測すると健康上問題がないぐらいの濃度にまで薄められています。現行の添付文書だけを鵜呑みにすると、授乳中のママは一切薬を飲めないか授乳をやめることになってしまい、子どもにもママにも切ない選択をせざるを得ません。添付文書の記載は科学的根拠に基づいた記載に修正していただきたいものです。 国立成育医療研究センターのホームページ(下記参照)に、科学的な情報をもとに評価が行われ授乳に安全かどうかが示された代表的な薬が載っています。授乳中に適さない薬としては、放射性ヨウ素・コカイン(麻薬)・アンカロン(抗不整脈薬)が記載されています。安全に使用できる薬としては、抗菌薬(抗生剤)・抗ウイルス剤・解熱鎮痛薬・喘息治療薬など多くの薬が挙げられています。さらに薬で困っているママに電話相談のサービスを行っています。 「妊娠と授乳」という専門書によると、解熱鎮痛薬ではアスピリン以外の薬、抗ウイルス剤であるタミフル・リレンザは安全であると書かれています。向精神薬の中には安全である薬もあるため、安易に授乳できないと決めつける必要はありません。ママの気持ちに寄り添いながら、慎重に対応することが大切です。他にも多くの薬が安全であります。 発売してまだ時間がたっていない新薬は、データーが出ていないこともあるので、控えた方が得策です。すべての薬について述べられませんが、風邪などで子どもに出される薬は安全であると考えられます。そもそも風邪の多くは原因がウイルスであるため、ウイルスに対して効果がない抗菌薬は必要がありません。薬が本当に必要かどうかも考える必要があります。市販薬や漢方はいくつかの成分が混ぜられており、データーがないことが多く、病院で出される薬で対応することをお勧めします。安易に授乳を中止しないで 母乳には人工乳にはない免疫が入っているので、子どもを病気から守ることができます。授乳を中止することで乳腺炎のトラブルが起きやすくなったり、ママ自身が後悔したり自分を責めることになるかもしれません。授乳を続けることには子宮収縮効果があり、出産後の出血防止や出産後の体重減少にも効果があります。その上、乳がんのリスクが低下するという報告もあり、ママ自身の体にもいいことがわかっています。経済的にも助かりますよね。読者のパパから質問 先月、知り合いのパパから質問を受けました。周囲の方から1歳すぎたらおっぱいをやめた方がいいと言われ試みたところ、夜の寝かしつけで泣きすぎて夫婦で困り果てたそうです。世界保健機関(WHO)では2歳かそれ以上まで母乳育児を続けることを推奨しています。子どもがおっぱいを飲みたいのであれば、飲ませていて構いません。イクメンパパさん質問ありがとうございます。参考文献:「妊娠と授乳」(南山堂2010年)国立成育医療研究センター http://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/