ブックタイトルちびっこぷれす Chibikko press 2013年10月号 NO.173

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概要

ちびっこぷれす Chibikko press 2013年10月号 NO.173

14明野子ども美術館・松崎春子館長にきく子どもの絵のみかた編集部 1歳くらいでなぐり描きを始めますよね。その時、親はどんなふうに接してあげればいいですか?松崎 とにかく十分にさせてあげてほしい。そしてできれば描いたものをとっておいてほしいです。紙もたくさん用意して、多少紙からはみ出してもいいようにしたり、壁一面に紙をはってあげてもいい。この時代はどんどん描くことが大事。編 子どもはなぜなぐり描きをするの?松崎 クレヨンや鉛筆はうまく持てないし、手の力も微調整が必要。彼らにとっては難しいことなのに、一生懸命やってますよね。自分の手の動きの軌跡を見るのが楽しいのかもしれないし、もしかしたら何か意味を込めているかもしれません。いずれにせよ心の奥に描きたい気持ちがある。編 その後、丸を描き始めますね。松崎 閉じない丸から閉じた丸へ。丸が描けた時は、お赤飯を炊いてもいいくらいの成長の節目だと思っています。それが描けると、すぐにそこに意味づけをして、自分の思いを盛り込むようになる。編 「この丸はママ」とかですね。子どもの思いが伝わる絵編 子どもの絵を見る時に大事なのは、ちゃんと聞いてあげること?松崎 大人は忙しくて子どもの気持ちに気づかなかったり、ふとしたひと言で傷つけてしまったりしがちです。「ママはどうせ捨てちゃうから先生持ってて」と、私の所に絵を持ってくる子もいます。編 とっておくことも大事ですね。松崎 Y ちゃんのママが、子どもが少し前に描いた絵を見直していた時、変なことに気づきました。その絵は自分に×を、ママに○をつけていました。絵には日付が書いてあったので、ママはあることでYちゃんをずいぶん叱ったことを思い出しました。彼女はすぐに娘に謝って「Yちゃんのことは大好きなんだよ!」って言ってあげたそうです。楽しいことも悲しいことも、子どもが思いを込めて描いた絵ってパワーが違う。見慣れるとだんだんわかってきます。そして絵は残るので、後から子どもの気持ちに共感することができます。そう言う私も、かつて教師をしていた頃は、たくさん失敗をしてきていて、その罪滅ぼしのために今の仕松崎 そう。そこに込めた思いを聞いてあげるところから表現が始まるんです。編 4歳前後で丸に手足を描いたり、胴体から手足を描いたりします。何かお手本を描いてあげた方がいいんですか?松崎 お手本は必要ありません。イタズラ描きのようなものでも全力で発明発見しようとしているので、先回りしない方がいい。私は自分の子どもに「描いてー」と言われた時は、逆に「描いてみてよ」って言ったり、子どもの絵を真似したりしてたかな。編 「ここはこの色で塗りなさい」も?松崎 それは絶対ダメ。ぬりえもこの頃の子どもたちには必要ないと思います。ある子どもがママの顔を青色でびっしり塗ってたんです。大人は「あれ?お顔は青じゃないよ」って言いがちですよね。でもそこにいた保育者はまず「何を描いたの?」って聞きました。子どもは「お母さん」。保育者が「お母さんやさしいもんね」って言うと、子どもは「うん、お母さん大好きなの」って。絵を見る大人がちゃんと子どもと関わると、こんなやりとりも生まれるんですよ。「見て、葉っぱ描いたの」。松崎さんのお子さんが2歳の時、包装紙の裏に初めて描いた葉っぱの絵。忙しかった松崎さんは「はいはい」と生返事していたが、後で見返してびっくりしたという。温泉に行った時の絵。なぜかママと2人でお散歩している絵になっている。実は赤ちゃんがいるから、ママと2人きりになれなかった寂しい思いが込められている。「ハイキングにママと行ったの。本当は行ってないけど」。