ブックタイトルちびっこぷれす Chibikko press 2013年9月号 NO.172

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ちびっこぷれす Chibikko press 2013年9月号 NO.172

11編集部 産科医不足の要因は?平田 勤務時間の長さや責任の重さ、訴訟の多さなど色々な要因が重なって、なり手が減っています。今、県内には約100 人の産科医がいますが、そのうちお産をとれるのは6割くらいでしょうか。お産も減ってるけど、それ以上に産科医の減少の方が著しい。編 病院も減っていますね。平田 今は7つの病院と8つの診療所しかありません。上野原・都留・塩山の市立病院でも分娩を休止していますが、例えば30 年前の上野原市立病院では、産科医1人で年間200 件ものお産を診ていた。これだと安全面で問題があるし、産科医は疲弊するばかり。それで10 数年前から、1病院に3人の産科医を配置する方針をとったんです。その一方で産科医が減っているので、分娩を取りやめざるを得ない病院が出てきた。とにかく産科医を増やすこと編 北巨摩や南巨摩ではお産ができる場所がありません。平田 私も妊婦さんと接する機会があります。例えば、上のお子さんの育児をしながら、遠くまで妊婦健診に通うのはとても大変だと思います。では今、何をすべきかってことですけど、とにかく産科医を増やすこと。そして5年とか10 年の計画で、県内各地にお産のできる拠点病院を作っていくのが理想だと思います。編 そのための取り組みは?平田 3年前から、医学生に産科医のやりがいや喜びを伝えるような活動をしています。例えば、研修会を開いたり、出産後の妊婦の止血や吸引分娩などの実技が学べる課外授業を行ったり。おかげで3年前は2人、2年前は4人、昨年は2人の産科医が確保できました。それまでは毎年0とか1人だったんですよ。編 地道な取り組みですね。平田 年3人くらいでやっと現状維持。なので各地に拠点病院を作るには、もっと多くの産科医が必要です。編 7つの病院で統一したプログラムを作って、産科専攻の研修医を受け入れているとも聞きました。平田 国家試験をパスした若い医師は、2年の初期研修を経て、3年の専攻医研修を受けます。この3年間のうち、県立中央病院・大学病院・市立病院で1年ずつ研修を受け、それぞれ性格の違う病院でその立場と症例を経験するんです。他県ではなかなかできない魅力的なプログラムとなっています。編 セミオープンシステムって?平田 峡東地域の妊婦さんが、妊婦健診は塩山市民病院で受け、出産は当院か甲府市立病院で行うというものですが、来年は北巨摩にも広げたい。まだ実験段階なので慎重にやってますが、システムさえできれば、県内各地に展開することも難しくないはずです。編 色々やっているんですね。平田 小さい県で医療機関同士が連携しやすいので、結構先進的だと思います。各地で問題になっている患者のたらい回しもないように連携できていますし、妊婦や周産期(妊娠22 週?出生後1週)の死亡率も全国平均を下回っています。編 医療・行政だけではなく、妊婦さんの側でできる努力って?平田 とにかく妊婦健診は受けてほしいです。時々、未受診妊婦が来ますが、情報がないといい医療が提供できない。編 リスクのある妊婦が減れば、医師の負担も減りますね。いいお産が元気の源編 院内助産室や助産師外来も産科医不足を補うための試みですか?平田 確かに正常なお産を助産師が管理してくれれば、医師はリスクのあるお産に力を集中できる。でもそれが目的ではないんです。編 というのは?平田 昭和30 年代くらいまでは、いわゆる産婆さんが扱う自宅出産がほとんどでした。そこでは赤ちゃんや妊婦が亡くなるケースが今より多かったのですが、それも比較的普通に受け止められていた。ひどい話ですが、初産婦が死産をすると「よかったね。これで次の子の通り道ができた」と言われたり…。でも今は違います。無事生まれて当然。何かあったら医療者のミスなのではと疑われてしまう。そこでどんどん医学的な介入を強めていった。でもそんなお産は楽しくない。そんなところから始まった院内助産なんです。私たち医師はお産がゴールですが、妊婦さんにとってはお産は子育ての始まり。赤ちゃんにとっては人生の始まりです。そこに寄り添える助産師の力を活用すべきだという考え方です。もちろん助産師のスキルアップも図りますし、何か異常があったらすぐに医師が駆けつける体制も整えています。国立大学の病院に院内助産って、初めての試みなんですよ。編 いいお産ってどんなお産ですか?平田 実は昨日もお産に立ち会ったのですが、久々に感動して泣いているパパを見ました。こういうのが私の元気の源ですね。家族が増えるのをみんなが心待ちにしている。それがいいお産だと思います。そしてそんなお産であれば、その後の子育てにもきっといい影響を及ぼすんじゃないかなと思っているんですよ。?山梨大学医学部附属病院産婦人科・平田修司教授にききました?山梨のお産事情とその将来は?そしていいお産ってどんなお産?全国的に産科医や産む場所が減っている…。山梨も例外ではなく、この10 年で約10 の分娩施設が減少。そんなお産をめぐる状況を改善するための様々な取り組みをリードする、山梨大附属病院の産婦人科医・平田修司教授へのインタビューです。