ブックタイトルちびっこぷれす Chibikko press 2013年7月号 NO.170

ページ
34/52

このページは ちびっこぷれす Chibikko press 2013年7月号 NO.170 の電子ブックに掲載されている34ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ちびっこぷれす  Chibikko press 2013年7月号 NO.170

ブックを読む

Flash版でブックを開く

概要

ちびっこぷれす Chibikko press 2013年7月号 NO.170

34小児科Dr.宮本の連載コラム午後10時、クリニックにて…    ?おほしさまの先生からの子育て応援“談”!?宮本直彦(みやもと・なおひこ)小児科医。山梨市加納岩総合病院勤務などを経て2004年、昭和町で夜間や休日の小児救急にも対応する医院・げんきキッズクリニックを開業。2009年春、移転してリニューアル。クリニックと同じ敷地内に「げんき夢保育園」を開園。Vol.99 食物アレルギー ~アナフィラキシーショックの対応法~ 梅雨明けすると夏本番ですね。山梨の夏はとても暑いので、熱中症に気をつけておすごしください。朝、昼にシャワーを浴びたり、水遊びを取り入れることが熱中症だけでなく、あせも(汗疹)予防にもつながります。 先月、風疹が流行中であることから、県内の多くの市町村で風疹ワクチンの助成が始まるというとても嬉しいニュースが入ってきました。多くの人が利用し、接種が広まることで風疹の流行が落ち着くことを期待します。風疹にかかった場合は他人に広げないような配慮をお願いします。 昨年12月、東京・調布市の小学校で、チーズなどにアレルギーがある5年生の女子児童が、給食を食べた後に亡くなるという事故がありました。食物アレルギーのお子さんや保護者をはじめ、園や学校の関係者の方々は大きな衝撃を受けたのではないかと思います。これをきっかけに私も各方面から相談を受けることが多くなってきました。今月は食物アレルギーの症状の中でも重症と言われる「アナフィラキシーショック」への対応についてお話をします。アナフィラキシーショックって 先日、牛乳アレルギーのお子さんが子育てサークルで出されたピザを食べたところ、牛乳が入っていたようで、体にじんましんが出て咳がひどくなり、さらに顔色も悪くなるアナフィラキシーショックの状態になって搬送されてきたお子さんを診察しました。何回かアナフィラキシーショックを経験しているお子さんで、お母さんも食材には非常に気を使っていたようですが、確認した(牛乳不使用)にもかかわらず実際には混入していたようで、除去の大変さを痛感しました。 一般的な食物アレルギーの症状は、じんましん・咳・下痢などです。複数の臓器に症状が出現する状態を「アナフィラキシー」と呼び、その中でも血圧が低下し意識レベルの低下や脱力を来すような場合を特に「アナフィラキシーショック」と言います。この場合は直ちに対応しないと生命にかかわる重篤な状態になります。 平成13、14年の食物アレルギー全国調査(厚生労働科学研究)によると、アナフィラキシーショックの頻度は10%程度あり、決して希なことではありません。アナフィラキシーショックが起こった場合、まず救急車を呼び医療機関に向かう体制をとり、同時並行で、処方されている方はアドレナリンの自己注射薬である「エピペン」を注射することが効果的です。30分以内にアドレナリンを投与することが患者の生死を分けると言われています。エピペンをうまく利用するには エピペンは2011年9月から保険適応となったため、急速に普及しています。体重15kg以上の方でアナフィラキシーがあった場合や、そのリスクが高い場合が対象です。エピペンを使うタイミングとしては、意識がなくなるようなショック症状に陥ってから使用するのではなく、その前段階である頻発する咳、ゼーゼーや呼吸困難などの症状がある段階での使用がより効果的であると言われています。必要性を判断した場合は、躊躇せずに勇気を持ってエピペンの投与を行なってください。エピペンの副作用は、小児では血圧上昇や心拍数増加がありますが、軽い症状であると考えられています。調布市のケースでも見られたように、家庭だけではなく園や学校においてもエピペンの必要性が求められています。子ども・保護者・かかりつけ医のみならず、園や学校の先生方との連携も非常に大切です。最近の動き 原因食品が食べられるかどうかは、アレルギー検査だけでは判断に限界があり、食物負荷試験を実施しないと最終的に解除できるかわかりません。県内でも食物負荷試験を実施できる病院(山梨厚生病院・甲府共立病院・大学病院など)が増えてきました。このおかげで医療設備が整ったところで安心して負荷試験ができ、検査が陰性でなくても負荷試験で解除できるようになってきています。さらに、これまでの治療は除去主体でしたが、除去だけでは治らないお子さんに「食べて治す」という経口免疫療法という治療も始まっています。この治療はまだ研究段階であるため、食物アレルギーの専門医が対応しています。参考文献:「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」 厚生労働省「食物アレルギー診療ガイドライン2012」