ブックタイトルちびっこぷれす Chibikko press 2013年6月号 NO.169

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概要

ちびっこぷれす Chibikko press 2013年6月号 NO.169

5たかったので使わなかった」ですよね。しかし確信がなかったのであいちゃんに聞いてみた。「なんで今日は手で食 べたの」。「手で食べたかったから」。彼女は笑いもせずにそう言った。え!ただそれだけ?! しつこく聞いた。「あっ君にお箸を貸したかったからでしょ」。「ううん、違う」。きっぱり言ったのだ。そのあまりのきっぱりさに私の予想は外れたと判断した。ただ単に彼 女は今日手 づかみで食 べたかった。しかしよく考えるとまさかだとは思う。一 度 断られた子に貸すために自分は炒め物まで手づかみで食べるなんて。いくらピッコロっ子でもありえない。まだ幼児なのだ。最近子どもを良く見すぎだと笑いながら反省した。 するとしばらくして座っている私の背にあいちゃんが寄りかかってきた。甘えてくるのは嬉しいなぁと思っていると、何の前 触れもなく耳 元でささやいた。「 誰かに借りる時ってさ、新ピカの方がいいでしょ」。えー!やっぱりそっち! なぜ今言う? ひっくりかえった。彼 女はやはり貸すために使わなかったのだ! もしかしたらご飯の時に必 要になるとわかっていたのかもしれない。しかもあっ君の横では言わず、場を変えて耳打ちした。友の横では手で食べたかったとごまかした。これ幼 児? 息を飲んだ。私は何も言わずに彼 女を抱きしめた。そして「お弁 当は手で食べてはいけません」と軽 率に言わなくて本 当によかったと思った。もしこう言ったら友のために新ピカの箸をとっておきたいというあいちゃんの善意はどこに行ってしまったのだろう。人の善意を無にしてはいけない、子どもの善意の芽を摘み取っては絶対にいけないのだ。友の水 筒を持ってあげている子から「自分の水筒は自分で持ちましょう」と安易に返却してはいけないと思う。大人のよかれと思う心ない言葉が、人ごとの社会を作っていく。箸を使う指導はいつか別の機会にすればいいだけだ。 どうか世の中のすべてのあいちゃんが、あの場で「箸を使いましょう」と軽 率に指 導されませんように。また私が正しく場を読める教育者になれますように。手づかみはよくないが、私の仕事はその先の見えないことを見ていくことだ。だいたいいつも、大事なものはそこにある。──心で見なくちゃものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは目に見えないんだよ。  「星の王子さま」より5~6月。木の下に、くるくるキレイに丸まった葉っぱの巻物が落ちています。これは「オトシブミ」という虫が2時 間もかけて作った巻 物です。中にはオトシブミの卵が一つ入っています。その卵がかえってからエサに困らないように、母親虫が愛情込めて作ったものなのです。