ブックタイトルちびっこぷれす Chibikko press 2017年2月号 NO.213

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概要

ちびっこぷれす Chibikko press 2017年2月号 NO.213

5神奈川県生まれ。幼稚園・保育園での勤務を経た後、2007年に北杜市で「森のようちえんピッコロ」をスタート。以来、森のようちえんの活動を実践し続けている幼児教育の専門家。自然の中で〝子どもたちが自分で考え、自分で決める?保育スタイルが注目を集める。現在、園児募集中!に歩き始めた。私も後をついて店 内に入った。彼らはまっすぐにレジに向かう。混んでいたらどうしようかと思ったが、たまたまレジは空いていた。4人の男子はレジのお姉さんに向かって横 一 列に並んだ。しかし神 妙な顔をして何も言わない。ゲ、誰、早く何か言って。私は祈るように彼らの後ろに立っていた。他のお客さんが来たら私が何か言おうと思ったが来なかった。なので冷や汗ものだが、もう少し待たせてもらった。するとやっとあおい君が絞り出すようにこう言った。「ばい菌ついてごめんなさい」。レジの方はポカンとされていたが、私は心で「よっしゃ!」と気 合いが入った。彼らはすぐに店から出ると思ったら動かなかった。え、まだ。4人はお姉さんをジッと見ている。長く感じた後 、あおい 君がまた絞り出すように言った。「 袋 返します」。するとレジのお姉さんがやさしく「あ、はい、袋いらないのね」と受け取ってくれた。そして子どもたちは出口へと歩き出したのだ。とても長い時間に感じた。そしてレジの方には大変申し訳なかった。また付き添いの私としては「ばい菌ついてごめんなさい」という奇 妙な台詞の説明をしたかった。しかしそれは子どもに対して失礼だと思い、一礼して一緒に出てきた。ここまで子どもに任せておいて、今 更 私の体 裁のために大人の管理下に置くのは卑怯だとも思った。4人の男子、特にあおい君はいい顔をして店から出た。しかしそれで大騒ぎするわけでもなく、次は静かに女子が店内に入り買い物を続けたのだ。  実 際 私はどうなることかと思った。子どもを信じるとは覚悟がいる。そして少しのかっこ悪さも伴うのだ( 笑 )。ついもらってしまったレジ袋に対して流さずに最後まで向き合った彼ら、そしてピッコロ内でなく社会に出てハードルを越えた彼ら、大 人 の 指 示がなく自分たちでやりきった彼らは本当にすごかった。さぞかし心を使ったことだろう。だがこうやって一つひとつハードルを越える度に、彼らの根っこは太くなる。そしてこれからもそうやっていくつもの壁を乗り越えて行くのだよ。あなたたちなら大丈夫。それに引き換え大人(私も)は大丈夫ですか。逃げていませんか。勇気はありますか。頼っていませんか。この全てを今 、彼らが見せてくれたのです。子どもはいつも大 人を越えている。