ブックタイトルちびっこぷれす Chibikko press 2015年12月号 NO.199

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概要

ちびっこぷれす Chibikko press 2015年12月号 NO.199

4 30代の頃、スキー場の託児ルームで3年間働いていたことがある。親がスキーをしている間子どもを預かる仕事だ。1日2回(9時~12時、13時~16時の3時間)、毎回違う子どもたちが訪れる。2~4歳20名を3人の保育士で保育した。楽しそうに遊んでいる子ばかりではない。親と離れ際に泣く子も大勢いた。しかし親は「じゃ、お母さんお仕事行ってくるからね!」と、スキーウェアを着て言う。遊びに行くことくらい乳児でもわかる。仕事に行くのならわかるが、遊びのために泣いた子を置いていくその行為が私にはわからなかった。2歳児は一番泣く。あまりに泣きすぎて汗びっしょりになる。体力も消耗するが泣き止まない。あの手この手を尽くしてもコラム/中島久美子 写真/砺波周平 デザイン/若岡伸也気持ちをわかる第  回だめで、もうどうしてもかわいそうでこれ以上預かれないと判断した時のみ、場内放送で親を呼び出す。「ごめんね、ごめんね~」と迎えにくる親ばかりではなかった。「泣いている子を預かるのがあなたたちの仕事でしょ!」と叱られたことが何度もあった。預かることはいくらでもできる。泣いた子を抱っこしていてあげればいいのだから。ただ、親が遊んで子どもだけが悲しいということはいいことなのか。そして子どもが泣きすぎてクタクタになってまでも、親はスキーがやりたいのか。日頃のストレス発散はわかるが、他に方法はないのか。ここは大人がスキーをしている間、子どもも充実した時間をすごすための場所なのだ。私は3年間毎日悩んでいた。「この仕事は本当にいい仕事なのか」。自分なりに答えは出た。 そして私はそこで随分保育力もついた。毎日2回ずつ違う子どもが来るということは、入園直後の状態が1日2回ずつ、しかも冬季の4ヵ月間毎日続くのだ。保育力がつかないわけがない。私はせっかく託児ルームに来てくれた子どもたちには、3時間楽しくすごしてほしいと思った。だから泣いている子をまずはなんとかしてあげたいと本気で思った。2歳、3歳はものすごく泣く。普通の幼稚園では、泣いている子は外を散歩すると泣きやむことがある。しかし普段着の子どもたちを極寒の戸外へ出すわけにはいかなかった。抱っこもおんぶもだめ。おもちゃを見せてもだめ。慰33